はやし司法書士事務所 愛知県一宮市
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 ◆ 個人版民事再生



個人版民事再生とは、継続的な借金の返済が困難となった場合に、各債権者に対する借金を、一定割合カットして圧縮した上で、原則3年間で無利息分割弁済することで借金の整理をする裁判上の手続です。
また、自宅の住宅ローンが残っている場合には、一定の条件を満たす場合には、住宅ローンは今までどおり支払いを継続し、それ以外の借金は一定割合カットして圧縮した上、原則3年間で無利息分割弁済することで、自宅を手放すことなく他の借金を大幅に減額して整理をすることが可能です。


  [メリット]


住宅ローンの残る自宅を手放すことなく、他の借金を整理することができる場合があります。

借金の返済額を、本来の残額以上に大幅に圧縮できる可能性が高いです。

破産と違い財産を処分する必要はないので、営業用資産を持っている自営業者は事業を継続しながら借金の圧縮をすることができる可能性があります。

破産のような免責不許可事由や職業制限がありません。


  [デメリット]


再生手続をとったことが官報に掲載されます。

継続的で安定した収入が見込まれる人しか使えません。

手続が複雑でたくさんの書類を裁判所に提出する必要があるため、専門家の関与なしには申立をすることが困難です。

小規模個人再生手続の場合、頭数で半数以上又は借金の額で半額を超えた債権者が反対すると手続が潰されてしまいます。


  このような人に向いた手続です

定期的な収入があることが大前提です

毎月一定額の返済ならば可能だが、残った借金全部を支払うことが困難な人
住宅ローンの残ったマイホームだけは何とか残したいが、それ以外の借金全部を払い続けることは困難な人
保険外交員や警備員等の仕事をしていて、破産すると職業制限に引っかかり支障が生じる人
破産の申立をしても免責の見込みのない人
ある程度の財産を持っていて、破産すると財産を全部換価しなければならなくなる人

  申立にかかる費用

個人版民事申立の際には、申立書に収入印紙10,000円を貼付し、裁判所にお金として100,000円(名古屋地方裁判所本庁への申立で再生委員が選任される場合。愛知県内の他の裁判所は、原則として再生委員が選任されないので、11,928円で済ます場合が多いようですが、他の地方では裁判所ごとにまちまちです。一般的には都市部の裁判所では20万〜40万円をお金として納める必要があるようです)、郵便切手を数千円分納める必要があります。

弁護士・司法書士に依頼する場合には、別途専門家への報酬がかかります。
 → 当事務所の報酬基準(個人版民事再生)

  小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続

個人版民事再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類の手続があります。
両手続の違いを簡単に説明すると、まず利用資格条件として、小規模個人再生は、将来、継続反復して収入を得る見込が必要であり、給与所得者再生は小規模個人再生を利用できる人のうち給与など定期的な収入の変動の幅が小さい(20%以内)と見込まれる者である必要があります。
また、小規模個人再生は、債務者が作成した再生計画案を債権者が書面決議する際に、頭数で半数以上又は借金の額で半額を超えた債権者が反対すると、再生計画案が否決され手続が潰されてしまい、その場合は事実上、破産するしか借金の方法がなくなってしまいます。
給与所得者再生は、再生計画案の裁判所の認可に当たり、債権者の決議は不要です。

実務では、債権者が再生計画案に反対することがあまりないこと、給与所得者等再生では計算上最低弁済額が高額になりやすいことから、小規模個人再生が利用されるケースがほとんどです。

  住宅ローンに関する特則

個人版民事再生の最大のメリットとして、住宅ローンだけは支払いを継続してマイホームを守ることができる場合があることが挙げられます。
ただし、この制度を利用するには、下記のような一定の条件を満たす必要があります。

@住宅ローンであること
当然のことのようですが、例えば自営業者のかたが「店舗兼住宅」の建築のためにローンを組んで担保権を設定したような場合に、建物の床面積の半分以上が店舗である場合には、「住宅」ローンとみなされず、この制度を利用することができません。

A住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと
消費者金融の「おまとめローン」などの担保権や、事業資金のための銀行の担保権が住宅ローンの後ろにくっついている場合、あるいは差押・仮差押の登記がされている場合などには、この制度を利用することはできません。

B住宅ローンの保証会社が保証債務を履行してから半年間経過していないこと
住宅ローンの延滞が一定期間続くと、住宅ローン債権が金融機関から保証会社に移転しますが、それから半年経過するともはやこの制度を利用することはできません。

  最低弁済額

個人版民事再生手続をとった場合、(住宅ローンを除いた)借金がどの程度まで減額されるか(最低でもいくら支払わなければならないか=最低弁済額)ですが、一定の目安として

借金の総額が100万円以内の人はその金額
借金の総額が100万円以上500万円以内の人は100万円
借金の総額が500万円以上1500万円以内の人は5分の1
借金の総額が1500万円以上3000万円以内の人は300万円
借金の総額が3000万円以上5000万円以下の人は10分の1

まで借金が減額されることになります(住宅ローンを除いた借金が5000万円を超える人は、個人版民事再生を利用することができません)。

ただし、この基準以上に財産を持っている人は、持っている財産の総額と同額までしか借金が減額されません(破産と違い、財産を換価する必要はありません)。
また、個人版民事再生手続のうち給与所得者等再生手続を選択した場合には、過去2年の収入・家族構成・居住地等の情報をもとに機械的に算定される「可処分所得額」の2年分も最低弁済額の基準となっており、この可処分所得額2年分のほうが他の基準より高い場合には、可処分所得額2年分と同額までしか借金が圧縮されません。


 ◆ 個人版民事再生FAQ

Q.ギャンブルや浪費が原因で増えた借金でも、個人版民事再生は申立できますか?
Q.数年前に破産をして免責を受けましたが、また借金をして返せなくなりました。個人版民事再生は申立できますか?
Q.フリーターやパート労働者、年金受給者でも手続を利用できますか?
Q.個人版民事再生を申立すると、職業の制限はありますか?
Q.保証人にはどのような影響がありますか?
Q.債権者が個人版民事再生手続に反対することはありますか?
Q.個人版民事再生手続をすると会社にばれますか?
Q.個人版民事再生手続をとると、いくらを返済していくことになりますか?
Q.すでに住宅ローンの支払いが延滞している場合でも手続をとることができますか?
Q.司法書士に依頼した場合と弁護士に依頼した場合でどう違うのですか?

Q.ギャンブルや浪費が原因で増えた借金でも、個人版民事再生は申立できますか?
A.できます。
個人版民事再生には、破産手続のような免責不許可事由というものがなく、借金の原因を問いません。
このため、もっぱらギャンブルで多額の借金を負った人など、破産を申し立てても免責が難しいと思われる人が個人版民事再生を申し立てるケースも多いです。

Q.数年前に破産をして免責を受けましたが、また借金をして返せなくなりました。個人版民事再生は申立できますか?
A.できますが、何故また借金を重ねてしまったのですか?
その原因に対する自覚・反省、今後二度と借金を繰り返さないためにはどうのようにすべきかという確かな決意がなければ、いずれまた借金まみれになってしまいますよ。

Q.フリーターやパート労働者、年金受給者でも手続を利用できますか?
A.将来にわたり反復継続して収入が見込まれる人でなければ個人版民事再生の申立はできませんが、これは自営業者や正社員に限られず、契約社員やアルバイト・パート従業員でも、また年金収入でもよいと考えられています。
ただし、最低3年間は借金の返済を続けていかなければならない手続ですので、裁判所が反復継続して収入が見込めないと判断した場合には、再生手続が認められないことになります。

Q.個人版民事再生を申立すると、職業の制限はありますか?
A.個人版民事再生を申立しても、破産のような職業制限はありません。
保険外交員等破産すると職業制限に引っかかってしまう人が個人版民事再生を申立するケースも多いです。

Q.保証人にはどのような影響がありますか?
A.個人版民事再生の手続をしてあなたの借金が圧縮されても、保証人の支払い義務は圧縮されませんので、あなたに代わって保証人が債権者からの請求を受けることになります。
破産の場合と同じく、これ以上保証人に迷惑をかけたくないというならば、できる限りはやく保証人の方に正直に事情を説明し、場合によっては保証人の方も早期に債務整理をする機会を確保してあげることでしょう。
なお、住宅ローンの保証人に関しては、住宅ローン特則を利用した個人版民事再生手続をとって返済していく分には、不利益を被ることはありません

Q.債権者が個人版民事再生手続に反対することはありますか?
A.小規模個人再生手続の場合、債務者が作成した再生計画案を債権者が書面決議する際に、頭数で半数以上又は借金の額で半額を超えた債権者が反対すると、再生計画案が否決され手続が潰されてしまいます(給与所得者等再生は、再生計画案の裁判所の認可に当たり、債権者の決議は不要です)。
しかし、消費者金融会社、信販会社などはまず反対しません。
これは、へたに反対して手続を潰してしまうと、破産するしかなくなってしまうため、結果として債権者はほとんど債権が回収できなくなってしまうからです。
一方、国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)等の政府系金融機関が債権者である場合、かなりの高確率で再生計画案の書面決議で反対してきます。
政府系金融機関は国民の血税で成り立っているという立場上、債権額がカットされてしまう手続に反対せざるをないのです。
このため、債務者がサラリーマン等で借金の半分以上が政府系金融機関からのものであったりする場合には、小規模個人再生手続は空気を読まずに反対されて手続が潰されてしまうおそれがあるので、最低弁済額が増加してしまうことがあってもあえて債権者の意向を気にする必要がない給与所得者等再生手続をとる検討もしないといけないでしょう。

Q.個人版民事再生手続をすると会社にばれますか?
A.再生手続の申立をしても、裁判所から会社に連絡はいきませんので、会社に知られることはありません。
例外として、会社から借金をしている場合、会社も債権者となりますので、再生手続に挙げざるを得ず、裁判所からの通知が行きます。
また、あなたが再生手続をしたことは官報によって公告されますので、会社の人がたまたま官報を目にした場合には運悪くばれてしまうかもしれません。

Q.個人版民事再生手続をとると、いくらを返済していくことになりますか?
A.一般消費者の個人版再生手続においては、住宅ローンを除いて200万円〜1000万円ぐらいの借金を抱えている人が多いようですが、そのくらいの借金の場合は、
@100万円
A借金の額の5分の1
B持っている財産の価額の合計額
のうちの一番高額なものを最低限支払わなければなりません(給与所得者等再生手続をとる場合、これにC「可処分所得2年分」という基準が加わります)。

例えば、借金の額が300万円、持っている財産の合計額が40万円の人の場合、@が一番高額ですから、個人版再生手続をとることで借金は100万円まで圧縮することができます。
借金の額が600万円、持っている財産の合計額が40万円の人の場合、Aが一番高額ですから、借金は120万円まで圧縮することができます。
借金の額が400万円、持っている財産の合計額が250万円の人の場合、Bが一番高額ですから、借金は250万円までしか圧縮できません。

Q.すでに住宅ローンの支払いが延滞している場合でも手続をとることができますか?
A.今後将来にわたって反復継続した収入が見込め、他の借金を圧縮することで延滞分を含め住宅ローンを返済することが可能な方ならば、住宅ローン特則を利用した個人版民事再生の手続をとることはできます。
ただし、すでに住宅ローンの保証会社が保証債務を履行し、半年以上経過している場合には、住宅ローン特則を利用することはできません。

Q.司法書士に依頼した場合と弁護士に依頼した場合でどう違うのですか?
A.自己破産と同じく、弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合で、報酬の額は弁護士のほうが割高となることが多いようです。
これも、破産の場合と同じく、弁護士は本人の代理人として個人版再生手続に関わる一方、司法書士は書類作成者として個人版再生手続に関わるから、ということが理由のようです。
では、何が違うのかというと、過去に東海三県(愛知・岐阜・三重)の各裁判所への個人版民事再生手続申立に関わった経験からすると、実は破産以上に個人版民事再生については、債務者からすると何も変らないような気がします。
というには、個人版民事再生手続のキモというのは、圧縮した借金をどのように返済していくかを定めた「再生計画案」の作成にあり、これは書類作成のプロたる司法書士がもっとも得意とする分野といえるからです。
また、あまりに弁護士費用の支払いの負担が大きい場合、住宅ローンの支払いができなくなったり、滞納税金が増加してしまったりして、再生計画案の認可や、後の再生計画の履行可能性じたいに重大な問題が生じてしまうことも考えられます。

なお、愛知県の裁判所の場合、名古屋地方裁判所本庁に弁護士が代理人として個人版再生手続の申立を行なう場合は、原則として再生委員が選任されないため、司法書士が書類作成者として個人版再生手続の申立を行なう場合と比べ、裁判所に納める実費が9万円ほど安くなりますが、弁護士に依頼した場合の報酬は司法書士に依頼した場合より10万〜20万円高いことが多いようなので、結局費用総額としては弁護士に依頼したほうが高くなる場合が多いようです。
一方、名古屋地方裁判所本庁以外の愛知県内の裁判所では、弁護士による代理人申立の場合だけでなく、司法書士が書類作成者として個人版民事再生手続に関与している場合にも、今のところ原則として再生委員が選任されないため、裁判所に納める実費じたいがもともと低額に抑えられていることから、司法書士に依頼したほうが費用が相当安く済むようです。

地域によって、弁護士が代理人になって申立する場合は再生委員が選任されない裁判所、弁護士関与・司法書士関与に関わらず再生委員が必ず選任される裁判所、弁護士もしくは司法書士関与の申立の場合は原則として再生委員が選任されない裁判所があり、再生委員が選任される場合の裁判所への予納金の金額も10〜40万円とバラバラですので、個人版民事再生の申立をお考えの方は、地元の専門家に依頼されることをお勧めします。

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 司法書士 林  徹 (愛知県司法書士会所属 登録番号;愛知第1236号 簡裁訴訟代理関係業務認定番号;第318188号)