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成年後見制度とは、認知症、知的発達障害、自閉症、統合失調症等精神上の障害により判断能力が十分でないかたが、実生活において自己に不利益な契約を結ばされてしまったり、法律上の意思決定をすることができず不利益を被ったりすることがないよう、後見人等の援助者がその意思決定を代行・サポートすることでご本人を法律面から支援し、その権利を守る制度です。
具体的には、制度の利用者ご本人に代わって成年後見人が、不動産や預貯金等の財産を管理したり、病院・施設等への入院・入所契約や介護サービス等の契約を結んだり、遺産分割協議に参加して相続財産を確保したりすることになります。
また、例えば一人暮らしの老人が悪徳商法に騙され高額な商品を売りつけられたりした際にも、この成年後見制度を利用することによって、被害を未然に防いだり、事後的に被害を回復できる場合があります。
あくまで成年後見制度は、判断能力が不十分なかたご本人の財産を守り、権利を擁護するための制度ですので、例えば親族が主導してご本人名義の不動産にアパートをたてて資産運用をしたい、とか、将来ご本人がお亡くなりになった際の相続税対策のために、という理由で利用する制度ではありませんのであしからず。
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成年後見制度の種類 |
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成年後見制度には、大きく分けて以下の4つの種類があります。
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成年後見 |
ご本人の判断能力が常に欠けている場合(例、買物にいっても釣銭の計算が全くできない)に、家庭裁判所から選任された成年後見人が代理人となりご本人に代わって契約などを行なったり、ご本人の行なった法律行為(日常に関する行為を除く)を取消したりします。
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保佐 |
ご本人の判断能力が著しく不十分な場合(例、日常の買物はできるが、不動産や自動車等の重要な財産の購入は単独では難しいと思われる)に、家庭裁判所から選任された保佐人がご本人の行う遺産分割や不動産売買などの一定の重要な法律行為について同意をしたり、取り消したりします。
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補助 |
ご本人の判断能力が不十分な場合(例、自動車を単独で購入することはできるかもしれないが、不安な部分が多く、援助者があったほうがよいと思われる)に、家庭裁判所から選任された補助人がご本人の行なう一定の重要な法律行為(保佐より限定的)について同意をしたり、取り消したりします。
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任意後見 |
ご本人がまだ十分な判断能力を有しているうちに、あらかじめ特定の人(たとえば親族や弁護士・司法書士などの専門家)との間で、将来判断能力が不十分になったとき財産管理や身上監護の事務をしてくれる後見人となってもらうよう公正証書を使って契約をする制度です。
将来ご本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に任意後見監督人(後見人の職務を監督する人)を選任してもらうことで、任意後見が開始します。 |
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例えばこのようなときに |
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実家の父は、母が亡くなってから認知症がひどくなり、このまま一人暮らしをさせるのは不安なので、父名義の実家を売却して老人ホームへの入居費用にあてたい。 |
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売主が判断能力を失った状態では不動産を売却することはできません。家庭裁判所へ後見開始の申立をして、後見人を選任してもらえば、後見人が裁判所の許可を得て、ご本人名義の自宅不動産を売却することが可能となります。
また、老人ホームへの入所契約も後見人がご本人に代理して締結することになります。
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歳のせいかこのところ物忘れが激しくなり、近い将来悪質商法にひっかかったりしないか心配だ。 |
ご自身の判断能力がしっかりしているうちに、信頼できるご親族のかたや、弁護士・司法書士等の専門家との間で任意後見契約をしておくことで、将来認知症等で判断能力が衰えたときに備えることができます。
また、まだご本人に判断能力はあり後見等の開始には至らないものの、高齢者のみの家庭で何かと不安な場合に、任意後見契約と併用して、定期的に訪問を行う契約(「見守り契約」)や財産の管理を依頼する契約(「財産管理委任契約」)を弁護士や司法書士などの専門家と結ぶことで、法的トラブルを未然に防いだり、早期発見や早期解決を行うことも考えられます。
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子供には知的障害があり、親である自分も高齢になってきた。もしも自分に何かあったら、あとに残された子供はどうなってしまうのか。 |
お子さんのために一度成年後見人が選任されると、そのお子さんが存命のうちは成年後見人がいなくなることはありません。ですから、例えばはじめは親御さんが成年後見人に就き、万一のことがあったときには、後任の後見人が申立または家庭裁判所の職権で選任されますので、後見が中断される心配はありません。
もちろんはじめから弁護士・司法書士等の専門家に後見人になってもらい、財産管理を任せることもできます。 |
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Q.成年後見制度を利用すると本人には何か不利益はありますか? |
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Q.後見人は本人の親族でもなれますか? |
Q.成年後見制度を利用したいが、自分の後見人を頼めるような親族も知り合いの法律家もいません。 |
Q.手続の申立にどれくらい費用がかかりますか? |
Q.後見人の報酬はどれくらいかかりますか? |
Q.後見人は利用者本人に関することなら何でもしてくれるのですか? |
Q.息子が浪費家で困っています。勝手に借金したり高い買い物ができないようにする「準禁治産制度」というものがあると聞きましたが。? |
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Q.成年後見制度を利用すると本人には何か不利益はありますか? |
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A.以下のようなデメリットが考えられます。
成年被後見人(成年後見の利用者ご本人)につき
・会社の取締役や医師・薬剤師・弁護士・司法書士など、一部の職業につけなくなるものがあります。
・建設業や風俗営業などの事業の許認可が受けられなくなります。
・印鑑登録できなくなります。
・日常の行為を除き、財産の処分権が事実上制限されます。
*なお、以前は成年被後見人には選挙権・被選挙権が認められていませんでしたが、平成25年の公職選挙法改正によって、成年被後見人にも選挙権・被選挙権は回復しました。
被保佐人(保佐の利用者ご本人)につき
・会社の取締役や医師・薬剤師・弁護士・司法書士など、一部の職業につけなくなるものがあります。
・建設業や風俗営業などの事業の許認可が受けられなくなります。
・財産に関する重要な行為は保佐人の同意なしに行なえなくなります。
被補助人(補助の利用者ご本人)につき
・あらかじめ家庭裁判所が定めた範囲において財産に関する重要な行為は補助人の同意なしに行なえなくなります。
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Q.後見人は本人の親族でもなれますか? |
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A.もちろんご本人のご親族でも家庭裁判所から選任されればなれます。むしろ、ご本人の生活ぶりを一番よく知っている同居のご親族などが成年後見人に就くのが一番自然かもしれません。
ご親族が後見人に就く場合、親族後見人を監督する「後見監督人」が家庭裁判所から選任されることがあります。
また、ご親族を後見人候補者として申立を行なったとしても、例えばご本人の財産が多額にのぼったり、他のご親族が反対していたり、何らかの法律上の問題を抱えていたりすると、裁判所の判断で弁護士や司法書士等の法律専門家が後見人に選任される場合もあります。
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Q.成年後見制度を利用したいが、後見人を頼めるような親族も知り合いの法律家もいません。 |
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A.少子高齢化・核家族化が急速に進んでいる今日では、お近くに後見人を頼めるご親族がいらっしゃらない方も多くなっています。
そうした場合には、親族以外の第三者後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が就任するケースも多くなっています。
そして、例えば我々司法書士は、成年後見制度の担い手・受け皿となるべく、「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」という組織を作り、かれこれ10年以上も各地の自治体や家庭裁判所と連携を図っています。
そして、成年後見制度の利用が必要なかたが、親族がいらっしゃらなかったり、親族がご本人の後見手続への関与を拒否するなどして手続の利用できないということがないよう、家庭裁判所等からの後見人候補者推薦依頼を受けて、積極的に成年後見人の担い手となる人材を輩出し続けています。 |
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Q.手続の申立にどれくらい費用がかかりますか? |
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A.愛知県下の家裁への後見等の申立の場合、実費として収入印紙3,400〜5,000円、郵便切手2,840〜3,880円、現金(鑑定費用)5万〜10万円が必要となります。
このほか、司法書士に申立書作成を依頼すると、別途司法書士報酬もかかりますが、これは事務所ごとに金額はまちまちです。 |
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Q.後見人の報酬はどれくらいかかりますか? |
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A.家庭裁判所に後見を申立した場合の後見人の報酬は、家庭裁判所がご本人の資産状況や後見事務の難易度等、さまざまな事情を考慮して決めます。ですので、一概にいくらとは言えませんが、特に財産も多くない普通のケースでは、だいたい月額1万〜3万円くらいと言われています(あくまで目安です)。そして、後見人は家庭裁判所から報酬付与の決定を受けない限り、勝手にご本人の財産から報酬を受領することはできません。
他方、任意後見の場合には、最初に任意後見契約をするときに、当事者間で報酬の額も契約条項で取り決めておきます(取り決めをしておかないと報酬を請求できません)。
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Q.後見人は利用者本人に関することなら何でもしてくれるのですか? |
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A.成年後見人の職務は、利用者ご本人の「生活・療養看護に関する事務」と「財産管理に関する事務」です。
ここでいう「生活・療養看護に関する事務」というのは、実際の食事の世話や介護を後見人自らするということではありません。利用者ご本人が必要な介護サービスや治療行為を受けられるように手配する等、与えられた権限の中でご本人に代わってご本人の生活や療養にとって必要なサービスや事務を手配するという職務がこれにあたります。
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Q.息子が浪費家で困っています。勝手に借金したり高い買い物ができないようにする「準禁治産制度」というものがあると聞きましたが。? |
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A.今の成年後見制度・保佐制度の前身としてかつて「禁治産制度」「準禁治産制度」というものがありました。これは、家庭裁判所の審判で、心神喪失の常況にあると宣告された者を「禁治産者」、心神耗弱または浪費者と宣告された者を「準禁治産者」とし、その権利行使を制限する制度でした。
しかし、現在の成年後見制度は、あくまでも利用者ご本人の判断能力(意思能力)を補う趣旨で運用されていますので、昔の「準禁治産制度」のような、単なる浪費癖に対する対策として、成年後見制度を利用することはできません。
ただし、その浪費癖が、何らかの精神的な障害(認知症や知的障害、精神障害等)が影響して引き起こされている場合には、後見人等を付けることが可能になる場合もあるでしょう。
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